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京都府外国人介護人材支援センター  インタビュー 様々な立場の人がお互いのことを理解し、学び合うことで、すべての人が人権を大事にすることにつながると考えています(社会福祉法人 京都太陽の園)

2022年07月27日

 京都府外国人介護人材支援センターでは、既に外国人職員を受け入れている事業所を訪問しています。
 今回は、特定技能「介護」の外国人職員を受け入れている、「障害者支援施設 京都太陽の園」、「障害者支援施設 こひつじの苑」の施設長である髙屋さんにお話を伺いました。(取材日:2022年6月24日)

 

※掲載内容はすべて取材時点のものです。
※感染症対策を行った上で取材を行っております。

 

施設長 髙屋 光晴さん

(写真撮影のためにマスクをはずしています)


■「社会福祉法人 京都太陽の園」について教えてください。

 

 昭和47年に身体障害者福祉法が一部改正され、日本で最初の「身体障害者療護施設 こひつじの苑」が社会福祉法人京都司教区カリタス会により開所されたことが、当法人の原点です。現在は、南丹市・舞鶴市・宮津市で7つの障害者の事業所を運営しています。

 私は、いつも職員には「ご利用者が職員を育ててくれている」と伝えています。ご利用者、外国人職員、日本人職員の全員が、大きな家で過ごす大家族だと考えています。お互いが歩み寄り、支えあい、刺激となることで、みんなで一緒に成長しています。

 


■「障害者支援施設 京都太陽の園」「障害者支援施設 こひつじの苑」について教えてください。

 

 「こひつじの苑」は、日本最初の身体障害者療護施設です。主に重度の身体障害を持っておられる方が入所されている施設で、介護が必要なご利用者が生活されています。生活を支えるための支援(介護)だけではなく、人生を少しでも豊かに…という視点から、日中活動(レクリエーション、行事、外出等)にも力を入れて支援を行っています。意思疎通が難しいご利用者も多く、寄り添うことに気を配り、ご利用者の思いをくみ取り、希望が叶う支援を目指しています。

 

 「京都太陽の園」は、昭和55年に「こひつじの苑」の隣に、「重度障害者の方々に生きがいを感じて働ける場を(「就労し収入を得る喜び」や「社会の構成員としての尊厳の回復」)」と、開所された授産施設です。ご利用者の年齢は20代から90代までと幅広く、入所支援の他に、生活介護や就労継続支援B型のサービスも実施しています。ご利用者は、朝9時30分~午後3時又は午後4時まで作業やレクリエーション活動等をして生活されています。自分の身の回りのことは、自分でできるご利用者が多いですが、障害の重度化や年齢とともに、支援が必要になってくる方もいらっしゃいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


外国人職員さんについて教えてください。

 

 6/24現在、「こひつじの苑」では1名、「京都太陽の園」では2名、他業種の技能実習生から特定技能「介護」へ移行したベトナム人職員が働いています。

そのような外国人を受け入れたのは、日本での生活に慣れておられ、一定の日本語能力があるためです。

 


■外国人職員を受け入れようとお考えになったは、なぜですか?

 

 当法人として、施設の人員配置基準は満たしているものの、ご利用者にとっては、ゆとりのある生活・支援の提供が望ましいこと、職員にとっては、短期的な休みだけでなく、産休・育休や介護休暇等の長期休暇も取得しやすく、「誰にとっても働きやすい職場」にするために、ゆとりがある人員配置が必要と考えています。今後も継続して外国人を受け入れることで、「お互いに助け合える職場」づくりをしていきたいです。

 


■受入前に不安はありませんでしたか?

 

 当法人は「最も援助を必要とする最後の一人の尊重」を理念に掲げ、「どんな人も同じ人間」と考えています。そのため、外国人だから、日本人だからという考えは特になく、受け入れにあたってためらいはありませんでした。

 職員やご利用者の中には「言葉が通じるか?」という不安を感じている方もおられました。しかし、実際受け入れてみると、身振り手振りを使う、伝わりにくい言葉は別の言葉に言い換える、ゆっくり話す、文章にルビを振るといった工夫をすることでコミュニケーションは十分取れることが分かりました。また、同じ国籍の職員を複数名受け入れることで、日本語が得意な人が通訳をしてくれるようになり、コミュニケーションはどんどんスムーズになっていっています。

 

利用者さんとコミュニケーションを取りながら、日中活動(ぬり絵)の支援をするカップさん


■受け入れにあたっての苦労を教えてください。

 

 特定技能「介護」の試験には合格していたのですが、在留資格変更のために必要な書類の準備に時間がかかり、正職員として雇用できるまでに時間がかかった職員もいました。前の職場を退職していても、在留資格の関係で勤務できない時期があったため、その間は、内定者として法人で借り上げたアパートを住まいとして無償提供し、食品や日用品は職員からの寄付を募ることで生活を支えながら、ボランティアとして関わってもらっていました。

 しかし、手続き等については、お世話になっている登録支援機関の方々が、丁寧に、根気よく最後まで対応してくださったので、とても助かりました。外国人の方を受け入れるにあたっては、親切丁寧で、信頼できる登録支援機関があってこそ実現できることだと思います。

 


■異文化理解について工夫されたことはありますか?

 

 当初の予定では、受入前に日本人職員がベトナムに行き、ベトナムの生活についての動画を撮影し、施設の職員間で共有することで日本人職員にベトナムの文化について理解してもらうつもりでした。また、日本人職員がベトナムの外国人職員のご家族に面会に行き、仕事内容や施設のことを説明することで、ご家族にも安心してもらう予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航ができませんでした。

 そのため、アパートや施設内においては、いつでもベトナムのご家族等と対面で話が出来るよう、Wi-Fi環境の整備を行いました。また、日々の生活の中では、ご利用者や職員も含めて積極的にお互いの言葉や文化について尋ねあったり、ある行事の際には、ベトナム人職員が自ら進んで「アオザイ」(正装として着用するベトナムの民族服)を着てカラオケを歌ってくれたりと、とても良好な関係が構築できています。

 


■業務の指導について教えてください。

 

 受入前は、ケアの方法を説明する時に使う「もうちょっと左」等の「ちょっと」というあいまいな表現が伝わるか不安に感じているご利用者や職員もいました。しかし、実際に指導を始めると、あいまいな表現の基準が人によって違うということは「日本人も外国人も同じ」だということに気づきました。指導の際は実際のケアの様子を見てもらいながら行うので、ケアの方法もきちんと指導出来ています。

 外国人職員にも日本人職員と同じように指導すれば困ることはありません。

 

指導者の方と一緒にお茶ゼリーの準備をするリンさん

 



■研修はどのように実施していますか?

 

 外国人職員にも日本人職員と同じ内容の研修を受けてもらっており、プログラムも同じです。ただ、法人理念、法人の歴史、虐待についての理解等、難しい言葉が多い研修もあるため、研修終了後にかみ砕いて個別に説明したり、フォローアップ研修を行うことで、スキルアップのサポートをしています。また、日本語の習得に向けては、地域で開催されている日本語教室を紹介し、積極的に参加してもらっています。

 


■利用者さん、日本人職員さんとの関係について教えてください。

 

 ご利用者は、外国人職員のこともよく理解してくれていて、「外国人職員には、思いをはっきり伝える」等、ご利用者が配慮してくれています。また、どの日本人職員も外国人職員には伝わりやすい日本語を使う等、工夫しています。

 外国人職員は、みんな明るく、元気があるので、施設の雰囲気も明るくなり、周りのご利用者や職員が元気をもらっています。若い外国人職員は、みんなにとって娘のような存在で、日本人職員、ご利用者からも大切にされています。日本人職員が自宅で栽培した野菜をおすそ分けしたり、休みの日に一緒に買い物に行ったりと、親子や友達のような関係も育まれています。

 


■生活の支援について教えてください。

 

 住む場所については、法人で借り上げのアパートを用意し、2人の外国人職員で共同生活を送ってもらっています。水光熱費、Wi-Fiの使用料は、金額の一部(低価格)を外国人職員に負担してもらっています。

 借り上げのアパートは、便利の良い場所にあるため、日常生活に不便はないようです。スーパーで買えないものはインターネット通販を利用したり、休みの日に日本人職員と一緒に大きな店まで買い出しに出かけたりしています。

 

 


■障害者施設での受け入れについてのお考えを教えてください。

 

 当施設においても、様々な障害(身体・知的・精神)があり、配慮が必要なご利用者もおられますが、個別に対応方法が異なるのは障害者も高齢者も一緒だと思います。個別の対応方法については、指導の際に伝えられるので、外国人職員には障害者の対応は難しい、障害の種別によって対応が難しい等ということはないと感じています。



■外国人職員を受け入れてみて、感じることはありますか?

 

 日本人職員が外国人職員に対して、様々な工夫をしながら分かりやすく伝え、指導することは職員のスキルアップにつながります。外国人職員の受け入れは日本人職員の教育にもなると感じており、受け入れるメリットは大きいです。

 


今後の受入れについてのお考えを教えてください。

 

 今後は様々な国からの受け入れも検討したいです。だた、借り上げのアパートでは2人の外国人職員でルームシェアをしているので、一緒に生活をする2人は生活習慣や精神的な面から、同じ国籍の方が良いと考えています。

 外国人職員を受け入れることは、人材不足に対応するだけでなく、違った文化を学ぶ良い機会です。障害のある人、外国人、日本人等、様々な立場の人がお互いのことを理解し、学び合うことで、すべての人が人権を大事にすることにつながると考えています。

 

(写真撮影のためにマスクをはずしています)

 


【指導者さん(現場の職員さん)の声】

 

 受入前は不安な気持ちもありましたが、受け入れてみると、みんなで仲良くなり、楽しく仕事ができています。

 外国人職員は仕事に対して、積極的に学ぼうとする姿勢が強く、分からないことはすぐに聞いたり、他の職員の仕事を熱心に見て覚えようとしています。そのため、業務を覚えるのが早く、すぐに仕事ができるようになるので、驚いています。

 支援記録はパソコンで入力をしていますが、外国人職員はマニュアルを見ながら、入力ができています。分からない部分は、直接、指導すると出来るようになっています。排便記録等、手書きの記録もありますが、他の職員が書く字を見ながら、問題なく記録ができています。

 


【施設概要】

<障害者支援施設 京都太陽の園>

・住所:京都府南丹市園部町横田前32

・TEL:0771-62-2838

 

<障害者支援施設 こひつじの苑>

・住所:京都府南丹市園部町横田前11

・TEL:0771-62-3363

 

・社会福祉法人 京都太陽の園HP: http://www.kyoto-taiyo.or.jp/index.shtml

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