京都府外国人介護人材支援センターでは、外国人介護人材に関する情報発信を行っています。
今回は、アルバイト(留学生)や技能実習、特定技能の受入れをしている社会福祉法人 本願寺龍谷会 特別養護老人ホーム ビハーラ本願寺に伺い、取材しました。
この施設で特定技能として働いているワレンティンさんは、日本語学校在学中に本センターに相談に訪れ、施設見学等を経て、ビハーラ本願寺で働き始めました。
城陽市にある、社会福祉法人 本願寺龍谷会 特別養護老人ホーム ビハーラ本願寺では、令和元年から外国人の受入れをされており、令和6年12月時点で、11名の外国人介護職員の方が働いています。
将来的には外国人介護職員がユニットリーダーを担うことを目指して、外国人介護職員が積極的に、夜勤や介護記録の作成等の業務に取り組めるように、指導されています。
今回の取材では、外国人介護職員のワレンティンさん、ワレンティンさんが所属するユニットリーダーの浜井良太(はまい りょうた)さん、施設長の井上貴詞(いのうえ たかし)さんに「外国人介護職員の育成」をテーマにインタビューしました。(取材日 令和6年12月27日)
※掲載内容はすべて取材時点のものです。
左から井上施設長、ワレンティンさん、浜井さん
■ 特別養護老人ホームビハーラ本願寺 基本情報
開設年月日 平成20年4月1日
定 員 入居者:100名、短期利用者(ショートステイ):8名
職 員 数 103名
ワレンティンさんは、2022年3月に来日し、日本語学校を卒業後、2023年10月からビハーラ本願寺で働いています。
ワレンティンさんには、ビハーラ本願寺で働くまでのこと、働いてみて感じること等をインタビューしました。
■自己紹介をお願いします。
ロシアのエカテリンブルク出身です。
ロシアで最後にした仕事は、防犯カメラを設置する仕事でした。介護の仕事は全くしたことがありませんでした。
■介護の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。
日本語学校で勉強する中で、介護の仕事をやりたいと思いました。
あとは、特定技能の仕事の種類を調べた際に、介護の仕事がいいなと思いました。
介護の仕事内容は、YouTube動画で知りました。
■ビハーラ本願寺を選んだ理由を教えてください。
働き始める前に、施設をいくつか見学しました。
ビハーラ本願寺を見学した時、職員さんや利用者さんが楽しそうにしていたので、ビハーラ本願寺で働きたいと思いました。
■現在の仕事内容を教えてください。
食事介助、排泄介助、入浴介助などをしています。
1番難しい業務は記録の作成です。専門用語などが難しいです。記録はPCやタブレットで作成しています。
■仕事で困ったことを教えてください。
仕事を始めた時は全部、大変でした。
特に、日本語でのコミュニケーションが大変でした。利用者さんとの会話は不安がありました。職員同士が話している内容もわからないことが多かったです。
■仕事でうれしかったことを教えてください。
利用者さんのお手伝いをして、お礼を言われる時が嬉しいです。
利用者さんから「ありがとう」と言ってもらえると、自分と利用者さんの気持ちが通じ合ったようで嬉しいです。
■休日のリフレッシュ方法を教えてください。
散歩に出かけることです。一人で旅行にも行きます。
雪を見たかったので、雪を探しに福井県に行きました。
家ではYouTube動画を見ています。仕事についての動画を見ることもあります。
■これからの目標を教えてください。
介護の仕事を続けたいです。介護の仕事は楽しいです。ですが、他の仕事をちょっとやってみたい気持ちもあります。
井上施設長、ユニットリーダーの浜井さんには法人全体の外国人介護職員の状況や日頃の外国人介護職員への指導等について、インタビューしました。
■ビハーラ本願寺の外国人介護職員の受入状況を教えてください。
井上施設長:現在、外国人職員は11名所属しています。国籍はベトナム、フィリピン、ロシア、インドネシア(インドネシアは今後入国予定)です。
令和元年にベトナム人3名の技能実習生を受入れしたのが最初です。現在はアルバイトや特定技能の採用もし、アルバイト(留学生)が2名、技能実習が1名、特定技能が8名となっています。
■ワレンティンさんが仕事を始めた当初、現場ではどのようにワレンティンさんをサポートされていたのか、教えてください。
浜井さん:仕事に慣れるまでの期間は、ワレンティンさんと自身のシフトが重なるように調整していました。
また、指導する職員同士で情報共有も行いました。ワレンティンさんの場合は、日本語学校に通われていたこともあり、元々の日本語能力が高かかったのが印象的でした。分からないことも「分からない」ときっちり言ってくれるので、わかるまで、翻訳も活用し、説明をしました。
ワレンティンさんはコミュニケーションに不安があるかと思いますが、利用者の方とも関係性をしっかり築けており、今では利用者の方からも信頼される職員になっています。
■外国人介護職員の夜勤について、どのような体制で実施しているか教えてください。
浜井さん:ビハーラ本願寺はユニット型で、1フロア4ユニットという単位です。
夜勤は2名体制で、1人2フロア担当します。外国人介護職員が夜勤に入る時は、もう1名は日本人職員が入るようにしています。
排泄などの介助は一人でやってもらい、なにかあった時にはフォローができる体制をとるようにしています。ビハーラ本願寺は建物が平屋のため、連携がとりやすいです。
■外国人介護職員に夜勤を担ってもらうまでに、どのような指導をされたか教えてください。
浜井さん:早出勤務・起床介助、遅出勤務・就寝介助を8~9か月ほどしてもらいました。
ある程度、これらの業務・シフトに慣れ、一人で出来るようになってきた段階で、本人と相談しながら、夜勤に入ってもらいました。
また、夜勤では記録が必須となるため、記録の作成に慣れるように、日中の記録を書いてもらいました。
■法人として外国人介護職員の指導について工夫されている点や課題を教えてください。
井上施設長:月1回リーダー会議を実施し、外国人介護職員の様子等について情報共有する機会を作っています。
また、介護福祉士の資格取得を目指し、日本人職員が勉強を教えることもあります。
日本語の勉強については、外国人介護職員にテキストを渡し、独学で勉強してもらっていますが、取組む意欲にバラつきがあり、その点は課題に感じています。
浜井さん:介護福祉士の資格取得に向け、勉強を教える中で、単語の意味はわかっていても、文章の読解ができず、問題が解けない場合が多いと感じています。介護福祉士の過去問をたくさん解いてもらい、問題文の文章に慣れてもらうようにしています。
■外国人介護職員と共に働くことで得られた効果について教えてください。
浜井さん:仕事に対する姿勢が熱心な方が多い印象を受けます。
一緒に働く中で、異国の文化を知れるのも楽しいです。ワレンティンさんで言うと、利用者さんがロシア語を覚え、ロシア語でワレンティンさんと挨拶を交わす場面を見ると、利用者さんにとっても良い効果が生まれているように感じます。
ゆくゆくは外国人介護職員の方がリーダー等の役職に就いていくかと思います。「自分も負けていられない」という気持ちが芽生える職員もいるのではないでしょうか。
井上施設長:法人としては、日本人職員にとって良い刺激になってほしいと思い、外国人介護職員を採用しています。
外国人介護職員がユニットリーダーとなっていくような組織をつくるのが目標です。その目標を達成するために、全職員対象の法定研修(スタートアップ研修)、階層別研修等も外国人介護職員に受講してもらっています。
これからも外国人介護職員の育成に法人としても力を入れていきます。